Walk Slowly

仕事と育児とヒュッゲ

それでもセブンイレブンは24時間営業すべきなのか?

f:id:ws-sugi:20190304115046j:plain

ども、ゆっくり歩いてますか?すぎやまです。

今日は月曜日だからこそ考えたい「働き方」の話。最近、セブンイレブンの24時間営業をめぐってオーナーとセブンイレブン本部が争っていることが話題になりました。

以前からコンビニの"オーナー"というのは名ばかりで、実際には仕入れにも値引きにもほとんど裁量権がないというのは有名な話でした。見切り商品(消費期限が迫っている商品)の値引きができないという問題は裁判にもなっていて、セブンイレブン側が敗訴している事例もあります。

最高裁でセブン-イレブンの「違法」確定――見切り販売の妨害で敗訴 | 週刊金曜日オンライン

ただほとんど同様の事例でオーナー側が敗訴している事例もあり、コンビニの値引き問題は闇が深いということが分かります。まぁお店側に値引きの権限を与えたら、お店によって値段が違うなんてことが起きてしまうことも考えられますからね。難しい問題だと思います。

さてそんな具合にさまざまな問題を抱えているコンビニですが、今回は営業時間の裁量権が表立った問題として現れてきました。まぁこうなったのは必然というか当然というか、遅かれ早かれ出てくる問題だったことは明白です。

今や人手不足による倒産が過去最高となっており、どこもかしこも人が足りない。それによってアルバイトの人件費は上がり続けています。基本的にコンビニバイトの時給は安いにも関わらず、それと反比例するようにコンビニが扱う業務はどんどんと増えています。「時給に見合わない労働を求められる」というのが私のコンビニバイトへのイメージです。

私も普段コンビニを利用しますが、店内では実にさまざまなサービスを扱っており店員さんはとても忙しそうに見えます。それでいて客からは接客態度やらなんやらでクレームをつけられたりするわけですから大変だよなぁと同情することもあります。

またコンビニバイトというのは「スキルや経験」という面においても、得られるものが少ないという印象がありますね。なにが言いたいかというと、履歴書やエントリーシートに書く時に「コンビニでのアルバイト」というのは印象が弱く感じられるということです。そんな理由もあって特に就活を見越した大学生なんかからも避けられるのがコンビニバイトの実際ではないでしょうか。(本当は得られるものは多くあると思うのですけど、企業ウケは良くないと思われます。)

なのでコンビニの人材募集って、はたから見てても「集めるの大変そうだなー」と思っていました。それでも昼間であれば、おじいちゃんおばあちゃんを集めればなんとかなると思いますけど、そうした年配の方に深夜に働いてもらうのは厳しいでしょうしね。深夜は時給が良いので学生が入ってくれるパターンが多かったみたいですけど、先ほど書いた理由から今は学生を集めるのも苦労しそうです。

じゃあ人の足りない深夜はどうしているのかというと、オーナーが自らお店にたっているんですね。うーん、つらい。コンビニオーナーだって若い人はそういないでしょう。一時的にということであれば辛抱もできるでしょうが、これから人手が減ることはあっても増えることは期待できませんから、今回こうした事態になったということには必然性を感じたわけです。

便利になって豊かでなくなった世界

24時間営業しているコンビニは、いまや私たちの生活にとっては当たり前のものとなっています。それは確かに便利ではあるんですけど、誰かの犠牲の上に成り立つ便利さって、本当に必要なんでしょうか。

このように書くと功利主義者の人からは次のように非難されるかもしれません。

「コンビニが24時間営業していることが生み出す恩恵の総和は、コンビニオーナーが感じる苦痛の総和よりも大きい。だから24時間営業していることは社会的に望ましいことなんだ。」と。

なるほど確かにコンビニが24時間営業でなくなった場合、不便を被る人もいるでしょう。でもそれは誰かが過労死ギリギリになったとしても維持され続けねばならないものなのでしょうか。そんな社会が本当に望ましい姿なのでしょうか。

こうした話をする時、私はいつも「オメラスの人々」を思い出します。オメラスはアーシュラ・K・ル・グィンの短編小説に登場する架空の町です。

オメラスは幸福と祝福の町、国王も奴隷も、広告も株式市場もなく、原子爆弾もありません。そんな美しいオメラスには、とある秘密があります。

「オメラスの美しい公共施設のどれかの地下室に、あるいは、ことによると広々とした民家のどれかの地下食料庫かもしれないが、1つの部屋がある。鍵のかかったドアが1つあるだけで、窓はない。その部屋に1人の子どもが座っている。その子は知能が低く、栄養失調で、世話をするものもおらず、ずっと惨めな生活を送っている。」

その子がその部屋にいることを、オメラスの人々はみんな知っていた……その子はそこにいなければならないことを、誰もが知っていた……自分たちの幸福、町の美しさ、親密な友人関係、子どもたちの健康……さらに、豊かな収穫や穏やかな気候といったものまでもが、その子のおぞましく悲惨な生活に全面的に依存していることを理解していた……もしその子が不潔な地下から太陽のもとに連れ出されたら、その子の体が清められ、十分な食事が与えられ、心身ともに癒やされたら、それは実に善いことに違いない。だが、もし本当にそうなったら、その瞬間にオメラスの町の繁栄、美しさ、喜びはすべて色あせ、消えてなくなる。それが子どもを救う条件なのだ。

私たちの社会は日々、便利になっています。信じられないほどに。では、私たちの社会は以前よりも「豊か」になったのでしょうか。私たちの社会は知らず知らずの間にオメラスになっているのではないでしょうか。それでもセブンイレブンは24時間営業すべきだと思いますか?

セブンイレブンは恐らく24時間営業を止めることはないでしょう。スマホを手にした私たちがガラケーに戻らないのと同じように、一度享受した恩恵というのは、いつしか前提となり、捨てがたいものとなるのです。

それでも私はこの社会がオメラスになってしまわないように、せめてコンビニのオーナーさんが自分で営業時間を決定できる裁量を得られるように願います。あなたはどう思うでしょうか。ではまた。

オメラスの話はこちらの本より引用しました。サンデル先生は正しい。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)